娘へ

あなたはこうしてできています

まず共感。話はそれから。

悲しいこと、辛いこと、寂しいこと、痛いこと、悔しいことなど、何が起こってもまず共感を示します。全ての話は、それからです。

 

大人も子供も、自分のことを理解してくれる人に対して心を開きます。そして、「この人なら自分の話を聞いてくれる」と思い、口を開くようになります。また、「この人の話なら聞いてもいいな」と思い、話し合いに応じたり説明を聞き入れたりするようになります。

まず共感を示すことで、子供を落ち着かせ、安心させることができます。また、子供とのつながりを作ることができます。子供との間につながりができれば、行き来は自由です。橋がなければ、川を渡ることはできません。どんなに説得力のある言葉も、川の向こうの相手には届かないです。

 


とーさんなんて、恵美や和美に何かあるといっつも、「そうそう!」「だよな〜!」「ワカル!」と繰り返しています。そうやって子供目線になってばかりいたら、だんだん大人のことが憎く思えてしまう瞬間も出てきてしまっている(子供目線になり切っている)今日この頃です。

 

 

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先日、こんなことがありました。

夜、家族4人でご飯を食べ終わり、みんなが歯を磨いてパジャマに着替えました。あとは本を読んで寝るだけです。

恵美はたくさん本を読んでほしいと思っていました。ですがその日は、恵美は昼寝がうまくできず疲れていたので、かーさんは早めに寝かせたいと思っていました。そこでかーさんは、本を3冊用意して、「これを読んで寝ようね」としました。普段読むのは、5冊くらいです。

用意した本を読み終わり、じゃあ寝ようかということで4人でベッドに入ろうとすると、「もっと本読みたかったのに〜」と恵美が泣き出しました。「たくさん読みたい」と思っていた恵美は、泣き出してしまいました。そこからは、何を言っても「もっと読みたかったのに〜!」と繰り返すばかりです。

「明日、たくさん読もうね」

「用意した本は全部読んだよ」

「今日は疲れたから、早く寝よう」

かーさんが何を言っても、返ってくる言葉は「もっと読みたかったのに〜!」です。ギャーギャー騒ぐばかりで、説得に応じる気配はありません。かーさんと恵美のやり取りは、平行線のまま。和美もそのすぐ横でベッドに入りはしましたが、寝ることができません。

「まぁまぁまぁ・・・」と、とーさんが間に入ることにしました。

「そうだよなー、もっと読みたかったよな。恵美は、本が大好きだもんな。」

恵美が泣き止みました。そしてボソッと「もっと読みたかったのに・・・」とつぶやきました。

「そうそう、もっと読みたかったんだよな。ワカル。」と、とーさん。さらに

「そーだよなー。本が大好きだからさ、いっぱい読みたいもんな。」と繰り返し、黙って聞く恵美。

そろそろいいかな・・・?と見えたので、説得開始。

「じゃあさ、恵美、また明日いっぱい本を読もうか。いっぱい寝ていっぱい元気になったら、明日は本がいっぱい読めるからさ。な?」

するとまた、うつむいていた恵美がウッウッウッと肩を震わせ始め、「もっと読みたかったのに〜!」と騒ぎがぶり返しました。

 


もう一歩だったのに!

とーさんの作戦は惜しいところで失敗でありました。

 


説得するのに、もう一手、何かが足りなかったのか、

だとしたらその一手は何か、

恵美の思いが強すぎてそもそも説得不可能なのか、

疲れていて(眠くて)何をしてもダメだったか、

とーさんにはわかりません。

 


騒ぎ出すことになる前に、予防することはできたと思います。かーさんが、「3冊だけ読む」というところで本人の合意をきちんと取っていなかったのがまずかったと、後で言っていました。

 


その後、少し騒いで収まりました。

 

 

 

これは失敗例というか、あまり上手くいかなかった例ではありますが、「まず共感。話はそれから」という手順の重要さが少しだけ見えたと思います。

かーさんの説得は、どれも分かります。現実的な話と、妥当な提案ですよ。大人がそう言われたら、「ま、それでいいか」と納得したり妥協したりするのに十分でしょう。

ですが、事実がどうか、説得が論理的に正しいか、提案が妥当かなんて、泣き騒ぐ子供にとってはどうだっていいことです。子供が泣いて訴えている時、いちばんに求めているのは、自分の話を聞いて気持ちを理解してもらうことです。気持ちを収めるのが先で、現実的な話はその後です。子供に共感を示していったん落ち着けば、じゃあどうしようかなと、現実的な問題にゆっくりと向き合うことができるようになります。

 

 

現役時代の島田紳助さんが、どこかの番組で言っていた話を思い出します。例によって、うろ覚えですが。。。

子供の相手をどうしたら上手くいくのかみたいな話から、紳助さんは「俺、子供の相手、めっちゃ上手いよ」と切り出しました。どう相手するのかというと、「そんなヤンヤヤンヤ言いなや。俺だって親やるのは初めてなんじゃ。わからんことも間違う事もあるわ。でもな、子供は一度やったことがあるからな、気持ち、めっちゃわかるで。」と。

暴走族が相手でも、まず「ワカル!ワカルで!」と入っていけば良いなんて事も言っていました。

やっぱ、まずは共感なんですよ。話はそれから。

 


ちなみに、これまではマイナスの感情に対する共感という話でしたが、楽しいことや嬉しいこと誇らしいことなど、プラスの感情にもまず共感することが大切です。

自分が嬉しいことについて同じような気持ちで喜んでくれる人に、自分の喜びを伝えたいと思うものです。そういう人を好きになったり、信頼したりするものです。

逆を考えてみると分かりやすいでしょう。例えば自分がスポーツの大会で優勝した時に、「ふーん、よかったね」とそっけない反応をする人は、好きにならないでしょう。嫌いにはならないとしても、その後何か良いことがあった時に、わざわざその人に伝えることはしないはずです。

 

子供が喜んでいたら、とーさんも自分のことのように一緒に喜びます。子供が「自分はよく頑張った」という気持ちでいるのなら、とーさんも「ホント、よく頑張ったよね」と誇らしく思います。こうした共感を繰り返し示すことで、子供とより強くつながることができます。

プラスの感情からもマイナスの感情からも、強いつながりを作ることはできます。つながっていれば、子供は話してくれるしこっちの話も聞いてくれるのだから、問題解決は簡単でしょ?