娘へ

あなたはこうしてできています

所有権を尊重する

おもちゃや食べ物など、重要なものは所有者を明確にして、所有権を尊重します。

このことで、「モノの取り合いによるケンカを減らすことができるのではないか」というのが、とーさんの仮説です。

 


ポイントは冒頭に述べた2点、

・所有者を明確にすること

・所有権を尊重すること

 


1つめ、「所有者を明確にする」というのは、わざわざ言う間でもなく明らかな事でしょう。誕生日のプレゼントはもらった人のものだし、リビングのソファーはみんなのものだし、とーさんのケータイはとーさんのものです。

ちなみにウチでは、ご飯もおやつも個々に別皿で出し、お互いに食べ物のやり取りはしません。食べ物の所有者も明確にしています。

 

 

重要なのは(そしてあまり重要視されていないのは)、2つめの「所有権を尊重する」という点です。

「尊重する」というのは、例えば下のような手順を踏む(見せる)ということです。


次女の和美が恵美のアンパンマン指人形で遊び始めたら、

「和美、それはお姉さんのだよ。」と、恵美にも聞こえる声で話しかけ、

「恵美、和美が指人形で遊びたいんだけど、貸してあげても良いかな?」と了解を求めます。

恵美からの返事が「良いよ」であれば和美に使わせ、「ダメ」であれば、たとえ恵美が使っていないとしても、和美には使わせません。決定権は、所有者の恵美にあります。

 


0歳の和美には何のことか理解できないでしょうが、2歳半の恵美にはこの手順が重要です。

この手順を何度も繰り返すことで、和美もとーさんも自分(恵美)のオモチャの所有権を尊重しているのだということを理解させます。

そして、所有者の了解を得なければ、他人のものを使ってはいけないということを理解させます。

 


「これは自分のもの」と自分も他人もわかっていて、そのように扱ってくれていれば、「勝手に使われた」という事態が起こりにくくなり、「取られるのでは?」という心配もなくなります。

「他人が使っていても、それは私のものだし、いつでも取り戻せる」という安心感から、「人に貸してあげても良いかな」と思えるようになります。


結果、恵美は3歳になった今、ほとんど全てのオモチャを和美や遊びに来た友達に貸す(あるいは勝手に使っていても気にしないか、気になっても文句は言わない)ようになりました。

 


また、恵美が人のものを欲しがったり無理にとろうとしたりしないのも、所有権を理解しているからかもしれません。

 

 

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ウチに数日間、泊まりに来ていた知り合いから、恵美の振る舞いについて注意されました。

恵美が2歳半くらいの時、恵美が大切にしていた指人形を和美に貸してあげない様子を見てのことです。


いわく、

・恵美はオモチャを和美に貸してあげず、思いやりがない

・オモチャはどれも「みんなのもの」として共有すべきであり、独占してはいけない

とのこと。

 


思いやりのある考え方だと思います。みんながどのオモチャも共有する考えや気持ちを持って、譲り合って使ったら、きっとケンカは起こらないでしょう。

彼女が生まれ育った地域では、子供たちはみんなそう教えられ、仲良く共有することができていたのかもしれません。私もその土地に行った事があるのですが、とても世話好きな人が多く、コミュニティの人たちが家族のように親しく付き合う地域です。


でも、オモチャはどれも「みんなのもの」という考え方は、オーストラリア(というか、特定の地域以外)では難しいように思います。全員がその考え方を共有していないと、成り立たないからです。

 


例えば、

恵美の家に友達が来た時に、「みんなのもの」として恵美のオモチャを友達が使ったとします。すると恵美は友達の家に遊びに行った時には、当然、友達のオモチャを「みんなのもの」として使おうとします。「みんなのもの」として使わせてもらえなかったら、不公平ですよね。

私のものは「みんなのもの」で、あの子のものは「あの子のもの」というのであれば、納得がいきません。

 

もちろん、その友達が「みんなのもの」という考えを持っていたとしたら、大丈夫です。争いは起こりません。

では他の子はどうでしょう。

また別の子は?

友達はどんどん増えていきます。そしていつか、「だめ!これは私のもの!」という子が現れます。その時、恵美はどう考えたら良いのでしょう。

 


それにね、例えば、お絵かきが好きな子が誕生日のプレゼントでもらった特別なペンセットなんかが「みんなのもの」だったら、悲しいですよ。自分が自分の誕生日にもらったものなのに、もらった瞬間から自分のものではないなんて。だったら、自分の誕生日にもらう必要はないし、自分が代表してもらうこともありません。

 


(公共物ではなく)家庭にあるものについては、「みんなのもの」という考え方は機能しないんです。

 


「みんなのもの」や「みんなで使う」ではなく、

「自分のものを人に貸してあげる」や「人のものを貸してもらう」

という認識を持たせることが大切です。


だって、大人は後者でしょ?

 

 

そのためにまず、所有者を明確にします。その上で、その所有権を尊重してあげることが大切なんです。

所有権を尊重してあげなければ(=他人が勝手に自分のものを使うようでは)、所有者なんて名ばかりになってしまって、「じゃ、私だって他人のものを勝手に使うよ!」ということになりますよ。で、「ちょっと!私の勝手に使わないでよ!」となって、「あんただって、私の勝手に使ってたじゃない!」って・・・なりませんかね?