娘へ

あなたはこうしてできています

「わかった?」とは聞かない

とーさんは子供に何かを言い聞かせた後で、「わかった?」とは聞きません。あまり意味のない質問だからです。

親にアレコレ言われた後で「わかった?」と聞かれたら、とりあえず「うん」と言っておけばその場に幕を引ける、ということを子供は知っています。特に、親が怒っていたりうんざりしていたりしたら、次の一撃を避けたり親の愛情をつなぎとめたりするために、「うん」以外の返事はありえません。

「わかった?」「うん」というやり取りは、形だけのお約束のように見えてしまいます。


自分が言ったことを子供がわかったかどうか確認したいのであれば、

「とーさんは今、なんて言った?」

「とーさんが言った事を、もう一度言ってみて。」

と言います。

 


この質問で、少なくとも、言葉が頭に入っているかどうかはわかります。その上で、とーさんが言ったことを

・理解して

・記憶して

・次の機会に行動に移せるか

は、また別問題です。恵美はまだ3歳なので、頭と心の成長が必要な場合もあります。

 

 

「わかった?」という質問は、言葉通りの質問ではなく「大事なことなんだよ」という念押しや、脅しとしての効果はあると思います。脅しとしては、とーさんもごく稀に使います。

数日前、はしごを登っていた友達を恵美が下から引っ張るという、危険かつ迷惑な行為をしました。すぐその場で恵美を取り押さえ、襟をグッと捕まえて引き寄せ、耳元で「人を押したり引っ張ったりしないんだろ?あぶねーんだよ。わかったか?」と怖〜い低音で囁きました。恵美は泣き出しました。

あんなことして怪我をさせたら、泣いてお詫びしたくらいで許されるもんじゃないよ。コトの重大さを、泣いて学んでください。

ここだけを切り取ると、「とーさんが怖い」という記憶だけが子供には残りそうに見えるかもしれませんが、恵美とはそんな薄っぺらな信頼関係ではないととーさんは信じています。「人を押したり引っ張ったりしない」とは、もう100回も繰り返しています。似た場面で注意したことは、以前にもありました。

当人、言葉は理解して、記憶しています。でも、場所が変わったり何かに夢中になったりすると、つい引っ張ったりしてしまうのでしょう。「行動に移す」ということが、できたりできなかったりです。

 

 

ジャパネットたかたの高田明氏が、こんなことを言っていました。

「伝える時に危険なのは、伝えた気になること。100%伝わった時には、相手の反応がある。」

高田氏は伝えた時に、カメラの向こうにお客さんの表情が見えるそうです。売れるかどうかは上手く伝えられたかどうかで決まり、伝えた時に(売れるかどうか)わかるとのこと。

また、「売れなかった時は、自分のスキルの無さに愕然とするんです。」とも言っていました。


つまり、

・売り手としての自分が上手く伝えられたら、お客さんは買ってくれる(行動する)し、

・売れるかどうかは(商品やお客さんではなく)自分次第、

ということです。

 

親子の間のやり取りも、同じです。

親がきちんと伝えられたら、子供は行動するでしょう。わかっていたら行動に現れるので、行動を見ていればわかっているのかどうか判断できます。「わかった?」と聞くのではなく、行動を観察すること。

 


また、とーさんは高田氏のように、「子供がわかったかどうか」ではなく、「自分が伝えられたかどうか」という視点を持つようにしています。これがとても大切。

子供の行動が変わらなかったとしたら、それはとーさんの伝えるスキルがなかったからです。

 


この考え方、当然ですよね。だって、相手は子供ですから。知識も経験も理解力も心も未発達の子供ですから。伝えるのは、至難の業です。

子供に言葉だけ投げかけておけば、(例えば問題行動がおさまるなど)子供の行動が変わるなどという、そんな簡単なことはありえません。そんなのだったら、レコーダーでもできます。言葉、声色、表情、タイミング、子供の発達段階、信頼関係など、いろいろな要素が合わさって初めて大切なことが伝わるんです。

 

 

それに、「自分が伝えられたかどうか」という視点を持つと、子供を責める気持ちがなくなります。


「前にも言ったじゃん!」

とーさんは2度、恵美にこれを言ったことがあります。アホか、オレは?

コレを3歳児に言い放って、何かが変わるとでも思っていたのかね?とーさんが「伝えた気」になっていただけ。高田氏の「伝える時に危険なのは、伝えた気になること。」という言葉が刺さります。自分の行動を正当化して子供を責めるだけの、ほんとーにダメな発言でした。


「だから言ったじゃん!」

コレも1度言ったことがあります。自分の正しさを無理やり押し付けるように、子供に確認させているだけ。こんなこと言っても、事態の改善につながらないでしょ。

 

恵美さん、ごめんなさい。とーさんも、修行中なんです。


何かが上手くいかなくても、子供は悪くない。とーさんが教えていないか、教えるスキルが無かったかです。