トイレトレーニング4 子供の背中を押すもの
トイトレの完了へと子供の背中を押すのは、だいたいのところ下の3つではないかというのが、とーさんの仮説です。
①親がかけるプレッシャー
②オムツやパンツが濡れて気持ち悪いという感覚
③「トイレでするって良いよね/オムツ(でする)ってカッコ悪い」という意識
①は取りあえず置いておいて、
②か③のように感覚か意識が変化したら、トイトレは完了へと大きく前進します。
恵美のトイトレは、パンツを濡らさずに長期間過ごした後で②の感覚が芽生えて、完了となりました。
友達やきょうだいがトイレでしているのを見て、「よし、自分も!」となるのが③のパターン。お漏らしして「しまった!やっちまった!!」と感じてトイレを強く意識し始めるのも③でしょう。
具体的な方法はいくつか考えられますが、何れにしても、意識の変化か感覚の変化のどちらかを引き起こすことが、トイトレでは重要だと考えています。
で、①なのですが・・・
どの保育士さんも専門家の先生もしまじろうもこぞって、トイトレでは「怒らない」ということを強調されています。なので、①は方法としては論外でしょう。とーさんも、これは反対です。
そもそもトイトレに限らず、
不安、恐怖、罪悪感、羞恥心、自己無能力感、他者からの失望で子供を動かすのは、好きではないです。
子供が悪くないのに怒ったり怒鳴ったりするのは、本当に嫌い。
オムツをいつまでもつけていてはいけない理由ってなに?
オムツを早く取らなければならない理由ってなに?
不潔だから?
ウンチをオムツの中でしたら、臭いが迷惑だから?
取り替えが大変だから?
とーさんはオムツで生活したいとは思いませんが、ずっとオムツでいてはいけない根本的な理由は見つかりません。
なので、オムツでいるかどうかは本人が決めることと考えて良いでしょう。であるならば、子供がオムツでオシッコをしたことに怒ったり怒鳴りつけたりするのは、おかしなことなんです。
落ち着いて考えれば、「おかしいよね」とは思います。
怒らない、イライラしない、ガッカリしない。これをいつも心に留めておいたつもりでした。
とはいえイライラしてしまう時もあったけど、結構にこやかに前向きな姿勢で恵美に接しているつもりでした。
でも実は、自分で思っている以上に怒ったり不機嫌な態度をとったりしていたのでしょう。
#####
ある日の外出先でのこと、
恵美がオムツの中にウンチをしました。おそらく、ウンチが出そうな感覚はあったけれども、トイレではしたくなかったのでしょう。そこのトイレは暗くて少し怖いらしいのです。
ウンチの匂いに気がついて、「恵美、ウンチ出たね。オムツ替えよう。」ととーさんが言うと、恵美はササッと速足で逃げ出しました。
その時とーさんはすでに決めていました。トイトレで何があっても、怒らないし責めないし、ガッカリした顔も見せないと。
「大丈夫だよ、恵美。とーさん、怒ってないから。大丈夫。」追いかけっこのようにして30mくらい歩き、隠れるように下にしゃがみこんだ恵美を抱え上げて、元の場所へと歩き出しました。歩きながら、抱っこした恵美に「ウンチしてさ、お尻が気持ち悪いよな。オムツを替えてスッキリしようぜ」などといつものトーンで話していたら、小さな声で恵美がボソリとつぶやきました。
「とーさん、怒らなかった。」
一瞬、何を言っているんだろうと思いましたが、すぐにその意味がわかりました。恵美はオムツでしたり外に漏らしたりするたびにいつも、「とーさんは怒ってる」と思っていたのでしょう。
とーさんが口でなんと言っていても、その様子から不機嫌なのはバレていたんですね。たとえ怒っていなくても、とーさんが元気なく床を拭いていたり、口数が少なくなったりしたら、「怒ってるかも」と恵美は思うでしょう。
思いっきり不機嫌な顔をしたり、「なー、ウンチもオシッコもトイレでしよーぜー。できるんだからさー。」と責めたこともありましたから。
そのようなネガティブな反応よりも、「大丈夫、次はできるよ」とか、「あと5秒早かったら、間に合ったなー!」などと、前向きに励ますことの方が多かったと思っていたのは、とーさんだけだったようです。
恵美はおもらししても、いつもと同じようにニコニコと元気な様子で変わりなく、怒っていると思われるとーさんに対する態度もいつもと同じでした。落ち込んだり卑屈になったり、反抗的になったりモノや和美にあたったりする事もなく、いつもと同じ。
でも、心の中では、「とーさん、怒ってるんだろうな。嫌だな。怖いな」と思っていたのでしょう。
「とーさん、怒らなかった」
そう言われて初めて、恵美の気持ちに気がつきました。とーさんのことをどう見ていたか、どんな気持ちでトイトレに取り組んでいたか、ようやく理解できました。
同時に、早くトイレでできるようになってほしいばかりに「トイトレの完了」が目的化してしまい、子供が成長したり幸せになったりというとーさんの目指す本来の目的を忘れていた事に気がつきました。
鈍感で単純な自分があまりにも情けなくなり、それでもいつも笑っていてくれる恵美がたまらなく愛おしくなり、小さな身体を抱っこしながらとーさんは泣きました。こんな父親でごめんなさい。
恵美は覚えていないと思いますが、この日のことをとーさんはずっと忘れません。
①親がかけるプレッシャー
これは、子供の背中をトイレへと押すかもしれません。でも、プレッシャーをかけることでトイレを成功させても、子供が適切に成長するとも幸せになるとも思えません。
①は方法としては論外ですし、コレでトイトレを成功させようという人はほとんどいないと思います。
とはいえ、どんなに気持ちを抑えようとしても、怒ったりイライラしたりガッカリしたりといった様子を子供に見せてしまっているかもしれないということは、いつも心の留めておいたほうがいいでしょう。子供の気持ちを理解する助けになります。
恵美のトイトレが長引いたのは、とーさんがイライラしていたことと、それを感じ取っている恵美の気持ちをとーさんが理解していなかったことが原因なのかもしれません。トイトレは、反省ばかりです。