娘へ

あなたはこうしてできています

大声は暴力と同じ

大声は暴力と同じです。大声で相手を圧倒して自分の意見や要求を通そうとするのは、力が勝つ世界、力の論理です。ケンカが強い子が番長になり、武力の強い国が覇権を握るのと同じです。

力が勝つ世界に生きる人は、自分の要求が相手に受け入れられないと、声を大きくして相手を圧倒することで要求を通そうとします。声が大きくなった時点で、もはや「議論」ではなく、「力比べ」です。悪くすれば、単なる感情のぶつけ合いになります。


大人同士でそんなことをしたらみっともないので、大人同士ではあまり大声は出しません。声が大きい方が正しいというわけではない、ということを大人は知っています。

なのに、親は子供に対して大声で叱ったり子供を動かそうとしたり。どうしてこうも大声を出してしまうものかと、悲しくなったり心が痛んだりすることがあります。

親ならば、大人ならば、相手を子供だと理解しているのならば、子供にわかる言葉でゆっくりと穏やかに話して聞かせることができるでしょう。相手は知識も経験も理解力も未熟な子供なのだから、大人の自分には簡単にできることでも、なんども言い聞かせたり待ってあげたりする必要があることはわかっているでしょう。

子供に対して大声を出しているとき、親はただの暴君です。力の弱い市民を力で支配する暴君ですよ。そのうち、市民が成長して力を持ったら、クーデターを起こしますよ。

 


大声を出す親から子供が学習するのは、「声の大きい人が勝つ、要求を通すことができる、得する」ということです。

ふだん大声で叱られたり欲求をねじ伏せられたりしている子は、不満があるときにはとにかく大声を出します。そうすることで、自分の要求を通そうとします。それを押さえつけるために、親はさらに大声を出します。子供も負けじともっと大きな声を出そうとするので、親子でハウリングを起こしますよね。

 

 


親が大声を出すのは、だいたい下の4つのケースでしょう。


1 子供が危険な時

2 してほしくないことをしている時

3 親の思った通りに子供が動かない時

4 子供が大声を出している時

 

 

 

とーさんは、1で大声を出すのは、アリだと考えています。子供が危険な時は、大声を出してストップをかけます。もちろん、そもそも危険はできる限り避けるようにしているので、1のケースはあまりありません。

それでも、子供2人を連れて外出するときなど、どうしても危険な場面は出てきます。例えば、和美の靴が脱げてしまって直しているさなか、恵美が道路の向こうに友達を見つけてワーっと走り出した時などです。

 

 

 

2は、誰にでもよくあるケースです。とーさんはかなりのウッカリ者なので、しばしばこうした事態に出くわしてしまいます。

この前おやつの時間に、鉄のフォークを持った和美からウッカリ目を離してしまい、白い壁をガリガリやられた時には「和美!」と大声で止めてしまいました。「はいはい、フォークはイチゴを食べるのに使うんだよ〜」などと言って止める事もできたのに。

和美のウンチオムツを替えている時にワーっと走って近づいてきた恵美に「おい!ウンチあるから!」と怒鳴ってしまいました。ウンチオムツをクルっと丸めて安全な所に置いておけば、怒鳴る事もなかったのに。

他にも、砂だらけの足で家に入る、ウンチをしたオムツの中に手を突っ込む、何種類ものパズルを混ぜる、壁に絵を描く、食べ物や飲み物をひっくり返すなど、「してほしくないこと」は毎日の生活の中ではいくらでも起こります。


まずはこういう事態を予防する、起こっても慌てない。

この2つで、大声で怒鳴ることは減らせると思います。

 

 


3が一番の難関です。子供はたいてい、親の都合のいいように動かないものだと思った方がいいですよね。そのため、マインドセットとして少なくとも下の3点は、心のどこかにいつも留めておいてます。


子供は親の都合に合わせて動かない(子供の都合で動く)

子供は効率を優先しない(自分の興味関心を優先する)

子供の全責任は親にある

 

だってね、

あと10分で家を出ないと遅刻するという場面でも、子供はもっと遊びたかったり着替えたくなかったりと、子供都合で動きますよ。で、時間がないのでクツを履かせようとすると嫌がり、自分で履こうとするんです。効率を優先しませんから。

もうね、あんたたちはそーゆーもんだってとーさんは割り切ってますよ。


なのでとーさんは、

余裕を持って予定を組み、

完璧よりも完了を目指し、

自分が楽な方法を選ぶ

ようにしています。


さっきの例で言えば、

どうしても早く車に乗せたいときは、携帯のYouTubeでしまじろうをつけて車内に置きます。すると2人とも、ゴキブリホイホイに吸い寄せられるように車に入ってきます。これが一番楽な方法。

1歳半の和美でも簡単な長靴を自分で履かせ、チャイルドシートに座ったらとーさんがクツに履き替えさせます。理想的な方法ではないけれども、とりあえずこれで作業は完了です。


良い方法ではないですよ。でも、怒鳴ったりケンカしたりするよりは良いかなと思います。親がイライラしていて、子供がのびのび育つことはないので。

 


上の楽な方法をとる前に試すべきは、前向きな声掛けです。

「早く出発して、公園でたくさん遊ぼう!」

「一番に幼稚園に行ったら、好きなおもちゃが使えるぞ!」


恵美の注意がお出かけに向いている時には、これで「はーい!」となります。恵美が動けば、和美もついてきます。和美が先の時もあります。

おそらく5歳くらいにもなると、こうした声掛けですぐに子供が動くことはあまりないかもしれませんが、子供の前向きな心を少しずつ育てていくのには役に立ちます。

 

 

 

4は、対処方法は簡単です。

子供が大声で「やだ〜!」とか、「欲しい〜!」とか叫んでいると、ついイラっとして、大声でやり返したくなりますよね。そこをグッとこらえて、


子供の大声がおさまるのを待ちます。おさまったら、

普段と同じトーンでまず子供の話を聞き、共感的に話します。


これで十分。

 

 

 

いろいろと書きましたが、もっともカンタンかつ全ての場面で有効なのは、

イラっときたら深呼吸!

 


恵美は、すごく痛いときと悲しいとき以外は大声を出しません。「大きな声を出せば自分の要求が通る」と思っていないからでしょう。